コンポーネント選択の手引き
お客様の用途に合わせ、弊社製品によるシステム構成を分かりやすく提案します。最新の開発成果を中心として、これまでよりもさらに自然で心地よい音楽の響きをご提供します。新たな試みとして、セミカスタム製品を始めましたので、それらのおすすめと事例を紹介します。
CDを聴くためのおすすめシステム
CDプレーヤー ― ディジタルを超えたディジタル。
CDに収録された音楽をさらに心地よい響きに拡げるため、新方式のディジタル・アナログ変換(D/Aプロセッサー)を搭載しました。これまでなかなか解決できなかったディジタル特有の音質を超え、上質のアナログレコードに近い自然な音空間が得られるようになりました。
アンプ ― 軽々と音の出るアンプは、どんな音楽にも追従します。
アンプ部は可能な限りシンプルで増幅段の少ない構成にし、何よりも音の鮮度を最優先しました。開放的で自然な響きと明快でもたつきを感じさせないスピード感で、オーディオ装置の存在を忘れさせます。新方式のディジタル・アナログ変換に対応した超広帯域です。
スピーカー ― シンプルなほど自然な音が聴けます。
フルレンジスピーカー特有の、低音から高音まで足並みの揃った自然な音空間を再現します。シンプルなフルレンジひとつで音楽表現が十分にできるならば、2ウェイや3ウェイなどの複雑なシステムはもう要りません。
ケーブル ― 機器間をつなぐハイウェイ。
電気的、音楽的に考慮されたケーブル類は、機器の性能を最大限に引き出すことができます。CDプレーヤーとアンプなどの機器どうしをつなぐラインケーブル、スピーカーケーブルなど、弊社が独自に設計したオリジナル製品を取り揃えています。
セミカスタム製品のおすすめ
機能モジュールを選べる「あなただけの」一台
弊社製品で採用されたさまざまな機能モジュールを組み合わせ、「あなただけ」のご要望に応えたセミカスタム製品を始めました。たとえばコントロールアンプ(プリ)内蔵のステレオパワーアンプ、あるいはコントロールアンプとデュアルモノーラル構成のパワーアンプ、さらにはMM型フォノイコライザー内蔵のコントロールアンプなど、既存のラインアップでは十分に対応できなかった、必要最小限のシステム設計から製作までをお手伝いします。コントロールアンプは電圧・電流変換を兼ね、ヘッドフォンや電流および電圧入力いずれのパワーアンプも効率よくドライブするために新規設計したもので、それ単体や他社製アンプとつないでもお使いになれます。ミュートスイッチや入力セレクターも含め、信号経路に接点やコネクタが存在しません。また、すべてDCアンプのため、信号経路にコンデンサもありません。
- CDプレーヤー ― S515 "ballade"または他社製
- DAC ― S512 "perceive"と各種アダプター、USB・同軸・光入力にマルチ対応したDAC(準備中)、または他社製
- インテグレーテッド・アンプ ― ディスクリート方式の可変ゲインアンプ採用、1 x RCA電圧入力、ミュート、ヘッドフォン出力付き、ディスクリート方式の高速・高解像度DCアンプ、内部で電流伝送、2 x 20W出力
- コントロールアンプ ― ディスクリート方式の可変ゲインアンプ(VGA)採用、3 x RCA電圧入力、ミュート、ヘッドフォン出力付き、電流・電圧出力
- ステレオ・パワーアンプ ― ディスクリート方式の高速・高解像度DCアンプ、RCA電流入力、2 x 20W出力
- モノーラル・パワーアンプ ― ディスクリート方式の高速・高解像度DCアンプ、RCA電流入力、左右独立の電源、25W出力
なぜプリアンプが必要なのか?
パワーアンプに簡単な入力セレクターと音量調節のアッテネータやボリュームを付ければ、現代的なCDプレーヤーやDACなどの音源はそのまま直結できるので、音はとりあえず出ます。いわゆるインテグレーテッドアンプと称する製品には、このように簡素な構成のものも含まれます。ところが弊社の実験によると、プリアンプを通したほうが、より精細で生々しい音場感や奥行きが際立ち、エネルギッシュで芯のある表現がはっきりと感じられるようになります。電気的には十分なレベルの電圧信号をパワーアンプに直接入力するよりも、ヘッドフォンアンプ程度のプリアンプを通すだけでも、実際には明らかに残響音が心地よく聴こえ、より生々しいライブ感を再現できるようになります。パワーアンプ単体よりもスピーカーのドライブ力が増したように聴こえ、音質のグレードが一段と向上します。一見、オーディオ装置はシンプルなほど鮮度がよいという原則に反しているようですが、事実なので仕方ありません。その理由として、パワーアンプのNFBループと、プリアンプのNFBループは別々なほうが望ましいという仮説も考えられます。また、異なる信号レベルを扱うアンプは、電源部を共用しないほうがいいのかもしれません。パワーアンプの入口にボリュームを付けたものだと、音量を絞った際に音が痩せることも原因のひとつと考えます。いずれにせよ、2つのアンプを通すと音が劣化すると思っている方は、プリアンプとパワーアンプという2段構成にした音質を実際に体感されることをお勧めします。この冗長に思える2段構成をより凝縮し、本当の意味で統合することができれば、真のインテグレーテッドアンプになります。
可変ゲインアンプ(VGA: Variable Gain Amplifier)
コントロールアンプ(プリアンプ)の入口に音量調節のアッテネータやボリュームを付けると、上記のパワーアンプと同様、音量を絞った際に音が痩せてしまいます。それは、ラインケーブルの静電容量とボリュームの抵抗値により高域が減衰することが考えられます。しかも、ボリューム位置によってアンプ側から見た信号源の抵抗が変化するため、特に音を絞ったときにつまらない音になります。そこで、アンプの入口にボリュームを設けずに一定の抵抗値に固定し、アンプのゲインそのものを可変にすることで、音量調節というプリアンプの重要な機能を実現することができます。このような特別に設計されたアンプを、可変ゲインアンプ(VGA)といいます。そのおかげで、ボリューム位置によって音質が変化したり、アッテネータの品質に依存して躍動感が左右されるといった従来の方式の欠点が克服されました。
パワーアンプのNFB
パワーアンプのNFBループは、一定の正弦波テスト信号で見る限り、アンプ自体の周波数特性を拡大したり、ノイズや歪などの電気的特性を改善することができます。ところが実際の音楽信号では、周波数によってインピーダンスが変化するスピーカーという動的負荷の影響を受け、また伝送時間の遅れや逆起電力により位相が崩れたきたない波形に出力信号が変形し、アンプ終段で完全に吸収されずにその出力の一部が入力に負帰還されることになります。その結果、繊細な残響音などがNFBで打ち消されてしまい、靄(もや)のかかったような平坦で躍動感のない音質に劣化します。それを改善するには、プリアンプで電圧振幅を十分に確保し、パワーアンプではスピーカーを駆動するだけの電力(電流×電圧)を増幅することに特化して、負帰還をかけないか、局所的なループだけに留めると、透明感のある躍動的な響きが再現され、ライブ感のある音楽に引き込まれる感動を得られるようになります。電圧ゲインを持たず、電力増幅する機能しかないなど、パワーアンプ自体が簡素であれば、いわゆるNO-NFB(無帰還)でも電気的特性はそれほど劣ることはありません。
まずは入出力の仕様を決めてから
入力系統、出力系統、オプション機能、要望するゲインなど細部の仕様やご予算については、お気軽にご相談ください。アルミシャシーは一例ですが、黒またはシルバーのアルマイト仕上げを選べます。市販のシャシーを活かしてコストを抑え、一台一台をていねいに手作りしています。セミカスタム製品は一台ずつ仕様が異なるため、コストのかかるシルク印刷や刻印ではなく、ラベル表示をしていますので、ご了承ください。
セミカスタム製品の事例集
【事例1】model S601 ― コントロールアンプ内蔵のステレオパワーアンプ
従来の機器をつなげる2系統の電圧入力を入力セレクターで切り換え、ヘッドフォン出力を備えます。入力にアッテネータやボリュームを介さず、可変ゲインアンプにより音量を操作するため、信号の劣化が少なく、広帯域で鮮度のよい音質を楽しめます。
パワーアンプは実績のある、電流入力ディスクリート方式の高速・高解像度DCアンプを採用しています。コンパクトなシャシー(タカチHY70-33-23BB, W330 x H70 x D230 mm)にすべてがオールインワンで内蔵されます。これ一台あれば、あとはお好きな音楽ソースをつなぐだけです。ヘッドフォンを抜くと、自動的にパワーアンプの出力によりスピーカーで聴くことができます。
内部配線と直接はんだ付けできる高品質RCAピンジャック、バナナプラグ、C型端子や裸線に対応する汎用スピーカー端子、IEC規格のACインレットなど、信頼と実績のある丈夫な端子類を使用しています。
【事例2】model S602 ― コントロールアンプ
従来の機器をつなげる電圧入力(3系統)を入力セレクターで切り換え、ヘッドフォン出力およびパワーアンプへの電流出力(電圧出力も兼用)を備えます。入力にアッテネータやボリュームを介さず、可変ゲインアンプ(VGA)により音量を操作するため、信号の劣化が少なく、広帯域で鮮度のよい音質を楽しめます。便利なミュートスイッチも装備します。
ライン1の入力インピーダンスは11.2kΩ(最大ゲイン+13dB)、ライン2と3は20kΩ(+8dB)とし、出力レベルの異なる音源でも音量を合わせやすくしています。セレクターとミュートは、信号経路をスイッチせず、選択していないライン系統をグラウンドに落とすことで、信号の劣化を抑えています。
コントロールアンプはコンパクトなシャシー(タカチUC26-5-18BB, W260 x H50 x D180 mm)に実装します。チルトレッグ(傾斜足)は折りたたむこともできます。扱う信号レベルの異なるプリとパワーは、別筐体にしたほうが有利です。アンプ終段には、放熱のよいメタル缶トランジスタを採用し、芯のある温かい音質でパワーアンプやヘッドフォンを朗々と駆動します。
【事例3】model S603 ― 小型デュアルモノーラル・パワーアンプ
パワーアンプは実績のある、電流入力ディスクリート方式の高速・高解像度DCアンプを採用しています。コンパクトなシャシー(タカチUC32-5-22BB, W320 x H50 x D220 mm)に左右独立した電源トランスを内蔵します。この事例では、お客さまのご要望で同サイズのS602コントロールアンプと組み合わせ、オプションとしてMM型フォノイコライザおよび2系統のヘッドフォン出力を備えています。
【事例4】model S604 ― 大型デュアルモノーラル・パワーアンプ(2 x 30W@8Ω、60W@4Ω)
パワーアンプは大型トランジスタ(マルチエミッタLAPT)を使用した、電流入力ディスクリート方式の高速・高解像度DCアンプを採用しています。操作は電源スイッチのみ。電流出力ができるS602コントロールアンプ(またはmodel S513i "pastoral")と組み合わせて使用します。ご要望により従来の電圧伝送用にも変更できるので、お手持ちのプリアンプやアッテネータと組み合わせてご活用ください。
余裕のあるシャシー(タカチHY70-33-23SS, W330 x H70 x D231 mm)に左右独立した大型電源トランス(2 x 100VA)を内蔵し、4Ωほどの低インピーダンスのスピーカーでもしっかりと駆動します。ご要望により、シャシーはブラックにも変更できます。定位に優れ、低域から高域まで厚みのあるフルボディーの音質が特徴で、身近でグランドピアノが鳴っているような臨場感があります。