Sparkler Audio | 技術

Sparkler Audio

スパークラー・オーディオ株式会社

技術トピック

 ここでは、弊社のコアテクノロジーについて述べています。

完全自社開発&ハンドメイド

小型パワーアンプの試作品

 弊社製品は、ハードウェアおよびソフトウェアのすべてにおいて自社開発によるハンドメイドで、外部への設計・開発の委託や、外注での製造・製作はおこなっておりません。取り扱う製品の細部に至るまで知り尽くした上で製品化し、つねに最新の技術と経験を活かした製品づくりをめざしており、さらに日々の改良に励んでいます。大量生産による効率的な市場供給と利潤の回収という恐るべき経済システムからは一線を画し、手づくりならではのきめ細かな製作により、ひとつひとつを「作品」としてていねいに仕上げるように心がけております。

超低ジッター・クロック発振回路

ディスクリートで組んだアナログのクロック発振回路

 スパークラー・オーディオは、変貌するディジタル・オーディオにたいして、ひとつの明確な見解をもっています。最近、いわゆる「ハイレゾ」と称するハイビット、ハイサンプリングのディジタル・オーディオの新しいフォーマットが流行しつつありますが、私たちはそのこと自体を否定するものではありません。しかし、CDフォーマットをはじめとする16ビットのオーディオデータは、アップサンプリングなどによって加工すべきでなく、ノンオーバーサンプリングと呼ばれるように、16ビットのままでアナログに変換すべきであると考えます。この主張には、確かな根拠があります。ハイサンプリングでは決まって256倍といった非常に高いクロック周波数を要求し、それがジッター(クロック信号の時間的なゆらぎ)を増大させ、焦点のぼけた、輪郭のはっきりしない音を作り上げる元凶であることを突き止めました。意外に思うかもしれませんが、クロック信号はアナログそのものです。クロックが変わると音のピッチがそのまま変化します。その結果、オーバーサンプリングで再生された音は、音階が不明瞭になり、和音がハモらなくなります。また、トランスポート自体のクセ、伝送経路のノイズなどによっても、同じくジッターは増加します。それを解決するのは、低雑音トランジスタによるディスクリートのクロック発振回路です。これによりディジタル信号をリクロックすることで、ディジタル・オーディオ本来の性能を発揮します。弊社のディジタル・オーディオ製品は、その超低ジッター・クロック発振回路を全面的に採用しています。

電気的な特性と音質との関係

電子回路はひとつの高速サーキットでもある

 これまでいくつものアンプを設計・試作するうちに、ふとあることに気づきました。それは、電気的な性能や安定性をねらって贅沢な回路にしたところで、試作品の歪み率や周波数特性が改善するものの、かならずしも音楽的な響きがよくなるとは限らないということです。それよりもむしろ、できるだけ簡素で増幅素子の少ない構成にし、これ以上はどれひとつ部品をけずってもアンプとして成立しないという、合理的でしかもぎりぎりの設計をすると、大抵はいい音で鳴ってくれます。シンプルであることの意義は、まさにここにあります。定電流源、カレントミラー、ダーリントン接続、並列接続などなど、理論的にはよさそうですが、現実的にはこうした「安全装置」が音楽信号の鮮度を殺します。おまけに、プリント基板に多くの部品がひしめくような実装では、それらが相互に干渉しあって頭で考えた理想から外れたところで動作していることさえあります。意外と当てになる目安として、増幅素子の数で音質が決まるといっても過言ではありません。
 自然界の生の音と、オーディオ装置を介した再生音との決定的な違いは、その「軽さ」にあると思います。自然界の音の媒体である空気は限りなく質量がゼロに近いため、どのような音の振動にも軽々と追従します。ところがオーディオ装置の再生音は、増幅素子にしても導線にしてもある慣性質量(イナーシャ)を持っているため、のっそりとしてワンテンポ遅れた音に鈍化します。これはちょうど、重い車体に大きなエンジンを積んだクルマよりも、軽トラックのほうが加速性能では優るのと同様です。オーディオ装置から出る音を自然界の生音に近づけるには、音楽信号を鈍化させる中途半端なテクノロジーという「足かせ」を徹底的に捨て去った、エネルギーの代謝のよい軽々と負荷をドライブできる簡素で「軽い」回路でなければなりません。
 シンプルにすることでただひとつ欠点を上げれば、部品点数が少ない分だけそれぞれのクセが出やすく、使用する部品をよく吟味する必要があることです。また、音楽信号がハンダづけや接点を通過する数も音質に影響するようで、特に端子の類いは曲者です。こうした点にとことんこだわり、新しく設計したアンプでは、従来のような太くて不細工なスピーカー端子を使うのをやめました。というのも、金属部分の多い箇所では、そこに電気的エネルギーをチャージするためにより多くの時間を要し、音楽信号の立ち上がりや立ち下がりに追従しなくなります。大きな金属は不可避的に一種のコンデンサの役目をし、エネルギーを滞留させます。同様にハンダづけも重要で、ハンダが多すぎると決まってキビキビしたスピード感が失われます。少ないエネルギーで素早く信号を伝達するには、プリント基板上の部品配置やパターンにも気を配り、モジュール間を最適な太さの導線で最短距離の配線をすることが大切です。

左右チャンネルの独立性とステレオ再生への影響

ヘッドフォンの標準プラグ

 最近注目されている、左右チャンネルのケーブルを分離したヘッドフォンを聴く機会があり、従来のものよりも顕著にその定位やステレオ感の拡がりを感じました。ご存知のように、ヘッドフォンのプラグにはふつう3つの端子しかありません。先端から左チャンネル、右チャンネル、共通のグラウンド(コールド)となっています。信号経路や電源ラインからこのような共通グラウンドをできるだけ減らすことで、ステレオ再生はさらに飛躍できることを予感しました。
 ステレオ再生の原点に立ち返って考えてみると、その立体的な描写は横方向の拡がりによる定位だけではなく、奥行き方向の遠近感までもがリアルに再現できなければなりません。それはちょうど両眼によって対象物の距離感をつかむのと同様で、焦点を合わせ、前後左右の微妙な位置関係までも正確に捉えるための位相や時間の精度を必要とします。ステレオ再生をこのような水準にまで高めるには、ステレオ装置の内部を左右対称に作るだけでは不十分です。そのためには、ディジタルソースの「源流」から左右に信号を振り分け、左右チャンネルが互いに干渉しないように完全に分離し、グラウンドをはじめ、シャシー、電源、D/Aコンバータ(DAC)、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカーに至るまで、左右チャンネルの独立性と同一性を可能な限り保つようにシステムを構成します。
 そのようなシステムを構築する第一歩として、弊社ではCDトランスポートそのものに2つのディジタル出力を設け、その後に続く装置を完全に分離できるようにしました。もちろん共通のグラウンドを引き回さないように、ホット側とコールド側いずれも、2つのディジタル出力は電気的にアイソレート(絶縁)されています。上記のような理想的な状態を実践すべく、その後に続く装置として、DACを内蔵する2つのモノーラル・アンプで構成することで独立性を保ちます。さらに、それらの内部構造や部品の特性、ゲイン、ケーブルの長さなど、左右チャンネルを可能な限り同じ条件にします。これによって初めて、真の意味での完全な「デュアル・モノーラル構成」が実現します。

ノイズからの防御

 私たちオーディオ・リスナーは、科学技術の発達によるますます混沌とした人工的環境の中に生活しています。私たちの暮らしがテクノロジーで満たされて、あらゆるランプ(LED照明、蛍光灯など)、携帯電話、コンピュータやさまざまな技術的装置が私たちの周りにあり,それらは電磁気的なノイズをまき散らしています。当然ながら、多種多様な広帯域のノイズ源がオーディオ機器の周りにもあります。
 ところが、オーディオケーブルやシャシーは、いっぽうでとても効果的な無線周波数のアンテナにもなっています。オーディオ回路も、これらの高周波ノイズが混変調歪を引き起こし、クリアな信号を汚しています。そのことを皮肉って「雑音ラジオ」と言うことさえできます。もしも外来ノイズがなければ、オーディオ回路はより完全に理想的な状態で動作します。そこで弊社では、外部環境からの影響、共通インピーダンスと機器内部のパルスノイズを減らす方法を研究しています。このような視点に立ち、弊社は製品開発に取り組んでいます。

よもやま話

トランジスタよ永遠なれ

TO-92パッケージの小型トランジスタ

 近ごろは世界的な分業化が進み、日本ではすでにリード線のついたトランジスタは次々と製造を終了している。それらはより小型の表面実装品に取って代わり、市場在庫はまだあるものの、TO-92パッケージと呼ばれる日本製トランジスタは、残念ながらほとんど「新規設計非推奨」となってしまった。表面実装品は、混ざると型番が分からなくなるので、困ったものだ。
 そこで止むを得ず海外製の半導体素子に目を向けてみた。はじめは品種や型番に不慣れだったが、思っていたよりも多くの優れた増幅素子があることがわかり、試しに使ってみたところ、なかなかいい音を出してくれる。海外製の小信号用トランジスタの中には、日本製では考えられないような高性能・高出力で、しかも電流増幅率(hFE)、解像度やスピード(Cob)の点でも十分に満足できるものがある。製造された文化背景の違いからか、音質面でもむしろ弊社の理想に近いものもあるため、当面は市場在庫の心配をしたり、増幅素子の選択に迷うことはなくなった。インターネットが普及したおかげで、簡単に入手できるようになったので、もはや使わない手はない。蛇足だが、主要部品のほとんどが海外製になった今、弊社の製品に刻印された“MADE IN JAPAN”の表示が通用するのも、それほど長くはないかもしれない。

バカにつける薬

 世間では「バカにつける薬」は無いことになっている。ことオーディオ機器に関しては、巷でいろいろなグッズが売られている。接触がバカになったコネクターやスイッチに塗布する接点復活剤やその類いであるが、どうも思ったほど効果がない。酸化した皮膜を除去する一定の効果は認めるが、それをそのまま放っておくと金属の接触面に油膜が介在することで、むしろ音が死んでしまう。それよりも試して一番効果的だったのは、ピカール(油脂の入った研磨剤)などで酸化皮膜を除去したあと無水エタノールできれいに拭き取り、10Bの鉛筆で金属表面をまんべんなくこすりつけ、最後に乾いたティッシュでよく拭き取る。導電性のカーボン粉末が凹凸を埋めて、より均一な面で金属同士を接触させるようにするわけだ。すると、接点による歪みが減るので、音が滑らかになる。
 また、ネジは振動で緩んだり、アースポイントなどでは接触不良が起こる。せっかく作った立派なプリント基板も、止めネジが緩んでいたら台無しになるばかりか、ハンダ付け不良に次いで初期不良の原因にもなる。ネジの緩みを防止する液(一種の接着剤)をほんの少し塗布してからネジ止めするとよい。これも一種の「バカにつける薬」ではあるが、肝心なところに使うと効果的だ。

オーディオ研究ノート

 オーディオ研究ノートの連載をはじめました。製品の研究開発で気づいたこと、さまざまな改良に取り組んだ内容をかいつまんで述べました。こうした日々の蓄積から、斬新な製品が生まれつつあります。どうぞご一読ください。